3人が本棚に入れています
本棚に追加
人々に雪と霰をもたらす空は暗い灰色ばかりをしていて、空自身でさえもがその寒さに参っているように見えたものだ。
尤も、大地の下(ちか)に広がる都市の片隅に住んでいたため、空を拝むことも滅多に無かったわけだが。
目の前を、白い雲の塊が風に吹かれて流されていく。
あれが雪や霰以外のもの――雨を地上に降らせる様を見て驚いたのは、故郷を出てから数日が経った後のことだった。
無論、知識としては知っていた。
南方の暖かい地域では、雪は空から落ち行く間に溶けてしまい、水の粒となって地上に降り注ぐことを。
そして、その水滴を雨と呼ぶということも。
最初のコメントを投稿しよう!