9/10
前へ
/44ページ
次へ
しかしながら、百聞は一見に如かずとはよく言ったものだ。 実際に空から水が降ってくる現象を目にし、これが雨なのだと唐突に理解した瞬間のあの驚きは、今も脳裏に焼き付いて離れない。 この地の温暖な気候は、他にも色々と極寒の地では決して得ることなどできなかっただろう新鮮な驚きを私にもたらし、心にぽっかりと開いていた大きな穴を少しずつ満たしてくれている。 しかし。 この優しい気候を以てしても、なお拭い切れない感情が、私の胸の奥にわだかまりとして存在し続けていた。  
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加