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さわ、と背後の草が音を立てた。 風はない。 とすれば、それは何者かの接近を示す音である。 そこに誰がいるか大体の見当は付いているから、私は振り向いたりしない。 ただ先程までと同じように、空を見上げているだけだ。 背後で再び草が鳴る――先の音よりも近い場所で。 そしてその直後、耳慣れた声が直ぐ後ろから聞こえた。 「ね、ステラ」 期待に満ちた、幼い子供の声。 肩越しに振り向いて見てみると、私の予想と全く違(たが)わぬ、眩しい笑みを浮かべた少女がそこに立っていた。  
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