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「何だ、イブ」
答えると、少女は僅かに顔をしかめた。
「だから、私の名前はイブじゃなくてエヴァだって」
「読み方が違うだけだろう。言葉が指すところの意味は変わらぬ」
私は小さく溜息を吐き、もう何度目になるかも分からないその遣り取りを、素っ気ない言葉で打ち切った。
「それに、お前も私の名を間違えている。お互い様だ」
「むう……」
それ以上言い返せなくなったのか、少女は小さな声で唸り、不貞腐れたように俯いてしまった。
その様を見下ろし、私は軽く苦笑する。
子供はどうにも扱いにくい。
要は、多数の中に埋もれる己という存在を認識できればそれで良いのだ。
その呼び方に固執する必要はないだろうに。
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