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「それで、今日は何の用だ」
長い空白にいい加減うんざりしてきた私は、沈黙を破って少女に問い掛けながら、足元に腰を下ろした。
途端に濃くなる、露に濡れた草の匂い。
ここは小高い丘になっていて、眼下には農村が一望できる。
私と少女が住まう、本当に小さな農村が。
今はちょうど朝の畑仕事の時間帯らしく、果樹園や小麦畑の周辺を何人もの村人が忙しなく行き来している。
それを眺めながら、付け足した。
「用があるから、わざわざ訪ねてきたのだろう」
「――今日こそ聴かせてよ」
短い返事の後、少女が私のすぐ隣に腰を下ろす気配があった。
いくら機嫌が悪かろうと、好奇心が充たされぬままに立ち去ることは出来ないようだった。
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