まるで確認するように

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裁判所に着いてからは更に酷いものだった。まずは既に処刑台が用意されており、逮捕の知らせを聞いた被害者家族と野次馬が集まっていた。 裁判の内容も同じく、一方的な進行で反論の余地もない。次々と見覚えの無い、血の着いたシャツやナイフを証拠として提示される。 ちょっと待てよと、そんなシャツ持ってないですよと言いたい。 しかし口に布を詰められていて、声が出ない。 「……以上を踏まえ、被告人の有罪はゆるぎないものであると言えます。」 裁判長に役人がそう告げた。 裁判長はしばらく考える素振り見せた後、固く閉じられていた口を開いた。 「ロイ・フォード、貧しい故に他人の金品を奪い、さらには殺害するという非道な行為、断じて許す訳にはいかぬ」 沸々と自分の中で怒りの感情が沸き上がってくるのを感じていた。 最初は微かに無事に帰れるかもしれないという希望を持っていた。それが裁判が進むにつれ諦めに変わり、今は行き場の無い怒りになった。 そして1人残すことになるニーナの事を考えると涙が溢れてきた。 すまん。 今日は迎えに行けそうにないわ。
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