まるで確認するように

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「ほぅ。記憶喪失か」 手を顎にやり、何かを呟きながら考える素振りを見せる。 「おい、あんたは誰なんだ? さっき魔王とか呼ばれてけど……」 俺の方をチラッと見てまた数秒考えるともう一度俺の方に向き直った。 「少し口の聞き方を直したいが、君はココのことはもちろん私のことも知らないのだな?」 「なんにも覚えてない」 彼はククっと笑うとこう答えた。 「私の名はベルゼブブだ」 彼の話はこうだった。 自分は7大魔王の一人で蝿の王、「暴食のベルゼブブ」の名を冠する者なんだそうだ。 七大魔王とか規模がでか過ぎてイマイチピンと来ないな。 そんな事より、俺が記憶を無くしている事には何も触れないんだろうか。 「俺は、やっぱり死んだのか?」 「あぁ。人間界で死後、ココまで落ちてきたようだね」 やっぱり死んだのか。 何も思い出せないな。ただ漠然と人間界に戻らなきゃいけない気がするだけだ。 「じゃあ、ココは地獄?」 魔王がいるくらいだしな。 「地獄……いや、冥界というべきだろうな。普通死んだ人の魂は中央管理局に逝くはずだが…君は別なようだね」 俺はかなり特異なようだ。記憶が無いってのも関係してるのかも。 「君は『紅い絆の翼』という組織を知っているか?」 「知ってるわけないだろ」 「………わかった。変なことを聞いてすまない」 なんだ?『紅い絆の翼』って。 俺がそれを聞こうとすると、ベルゼブブは急に立ち上がった。
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