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目を覚ますと俺はベッドに寝かされていた。
どうやら個室に移動させられていたようだ。意識を失うまではあった激痛も今は無くなっていた。
しかし、本当に悪魔に転生したのかイマイチ実感が沸かない。体を起こして腕を回してみても何の変化もない。
そうだ、悪魔になったのなら何かしらの魔術が使えるかもしれないじゃないか。
俺はベッドから降り、横のテーブルに置いてあった花瓶を睨み付ける。
そして手をかざして意識を集中させる。自分の中の何かを爆発させるイメージで解き放つ。
「うぉぉお!割れろぉっ!」
「……何をしているんですか?」
聞いたことのない声にハッとして振り向くと部屋のドアの前にメイド服を着た女の子が立っていた。
その容姿は短い黒髪で割とスレンダーな体をしていた。締まるとこは締まって、出るところは出る。詰まるところ、かなりの美人だ。
そんな彼女は俺に軽蔑の目を向けたままこっちにやってきた。
「……魔王様より、フォード様のお世話をするよう命じられ来ました。ルナ=アルジェントと申します」
ルナと名乗ったこのメイドさんはぺこりと頭を下げた。
「よろしくな。えー…と」
「…ルナとお呼び下さい」
「じゃあルナ、よろしく。俺の事はロイでいいよ」
俺は握手を求めようと手を伸ばすとルナも手を差し出す。その流れでルナは迷わず俺の太ももを蹴ってきた。これは痛い!
「…ったぁ!!ぐぁぁおおお…」
なんでだぁ!今の流れでどうして蹴りをいれるんだ!床で悶絶している俺の頭をルナはヒールのかかとでグリグリしてきた。
「あ、頭が…割れっ、る」
「…私に触れないで下さい。気持ち悪いです。例えガラス越しでもあなたに触れられるのは不愉快です。死になさい」
どんだけ嫌われてんだよ、俺。というか初対面なのに!普通メイドさんはこんなことしないよね?でも、ここ地獄だし……。そういう人もいるのかも。
あ、パンツ見えた。
「……っ、死ね!」
よりいっそう強くグリグリしてくる。ていうか何で心の中が読めんだよ!
「……目がいやらしいです。死んで下さい」
この後もう一度、意識を失ったのは言うまでもないだろう。
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