短編1

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――雨の中、立ち尽くす彼に気付いたのは何時の事だったか。 五年前のあの日から『彼』は雨の日にだけ現れた。気付けば視界の隅に居て、そっちを見遣ると消えている。そして視線を外すとまた現れるのだ。 明らかに生きている者の所業では、無い。 生きている者でない―死人ならば『彼』は何の為に現れるのだろうか。 <理由―強い未練があるから死んだ人は現れる>何かの本で読んだ記憶がある。疑問を持った覚えも。 <強い未練を持っているのは死人か、それとも> ダメだ。 ダメだ?何故否定した?何を否定した?ただの概念論ではないか。関係な、 本当に? 何故否定することを否定する?何故――
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