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「おい司。少し落ち着いて座ってろ」
「親父…いいから仕事に戻れよ」
「出来る訳無いだろ。初孫の誕生の瞬間に…」
この会話を一体何度繰り返しただろう?
と言うより、瑠璃が分娩室に入ってから何十分経ったのだろう?
本当だったら立ち会い出産するはずだった。
だが頑なに瑠璃が拒むのでしかたがなくこの親父と待ち合い室で待っている。
因みにこれまた瑠璃の意向で“男”が生まれるか“女”が生まれるか分からない。
俺としたら瑠璃によく似た女の子が生まれれば嬉しい。
だが瑠璃によく似た男の子でもやはり嬉しいだろう。
それを川崎に言ったら…
『性格は瑠璃ちゃんに似ればいいんな…』
とバカにされた。
そんな事を思い出していると凄く大きな鳴き声が聞こえてきた。
ハッと顔を上げると瑠璃が入った分娩室からだった。
「…司…うちの孫は相当元気がいいらしいな」
親父はそう言って苦笑した。
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