第一問

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その拍子に、僅かだが鉄人の握力が緩んだのを感じた。 これならイケる! まだまばゆい光が全体に照らされて眩しかったが、今はそんなことは関係ない! 偶然だが光が僕に味方してくれたんだ! これは逃げきったら光に感謝しなくては。 「今だ――!」 僕は鉄人の手を振りほどき、廊下の床を強く蹴った! 「くっ、吉井! 貴様……!」 「一昨日来やがれ、鉄人!」 僕は猛ダッシュで駆けようとして、気付いた。 ちょっとした違和感。 それは――― 光が僕に纏(マト)わり付く。 「離れない! 僕を助けてくれたんじゃないのか、光!」 なんてことだ。こんな大事な場面で光に懐かれてしまうとは想定外だった。 なんとかして振りほどかなくては。 そう思ったその時だった。 ふいに、教室の中から聞き慣れた声がした。 「……雄二。何してるの?」 「ああ、暇だったんでちょいと秀吉の鏡を拝借してな。太陽の光を鏡で反射させて、明久の顔に当ててたんだ」 「……吉井、神々しい」 「雄二ぃぃぃいいゐィィィッ!!」 心の底から叫んだ。 味方だと思っていた光が、それは雄二が作り出した虚像に過ぎなかった。 すると、再び肩に力が入る。 嫌な予感がしたので、ゆっくりと背後を振り向いた。 「ウェルカム、吉井」 鉄人が、一昨日来てしまった。 結局、僕を拉致(ラチ)した鉄人はクラスの授業を自習にしてまで、僕の説教に力を注ぎ込んだ。
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