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「して、ムッツリーニ。件(クダン)の品だが……」
「…………無論、撮影は成功済み」
重々しく、ゆっくりと首を縦に振る。
その裏切らない精神に俺は軽く笑みが零(コボ)れた。
「さすがだな。まさか俺の依頼した5人の生徒を三日以内でカメラに収めるとは」
「…………これくらい、どうってことない」
「謙遜とは……よく出来た人間だな」
彼が周囲から信頼されていることを改めて実感する。
「…………校内を中心に網を張った」
高校生とは思えない発言だが、ここはあえてツッコミは入れないでおこう。
するとムッツリーニは、自分の学生鞄からごそごそとあさり始めた。
「…………これが例の5人の写―――」
「待った。ムッツリーニ」
まさに写真を出そうとした彼を俺が間髪入れずに制止させた。
怪訝に見つめる彼に、俺はゆっくりと口を開いた。
「写真を見せる前にまず一つ確認したい。ムッツリーニ、俺はお前にどういう条件を提示したか覚えてるか?」
「…………『カメラのアングルに気を付けろ。下着が映れば俺は買わない』」
どうやら彼は三日前に言った条件を覚えていたようだ。
「そうだ。俺はその条件を変更する気はない。映っていた場合は交渉決裂。取引は中断させてもらう」
「…………何故、そこまでこだわる?」
彼が疑問に思うのも頷ける。
「……これは俺の個人的なこだわりだ。誰かに咎められようとも俺はこのこだわりを変えることはしない」
「…………?」
高らかに放った。
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