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「なぁ谷口よ。お前まさか…」
「悪いが、そのまさかだ。前回の成績で親父にシバかれたからな」
なんてことだ。
俺がハルヒと仲良くお遊びしている間に、そんなに差が開くとは。
俺はこれが現実なのか、とどこぞの悲劇的主人公のような愕然としたリアクションを取る前に、わらわらとリストにたかる生徒を 掻き分け、視線を向けた。
一番上が成績最劣等者の名前が書かれている。
吉井明久。こいつはもはや常連だから驚くことはない。
噂じゃ、教師から『観察処分者』という不名誉極まりないの二つ名を貰ったらしい。
羨ましくもなんともないが。
そして下へ下へと視線を下ろし、最後の辺りに差し掛かり……あった。俺の名前だ。
俺や谷口の名前が乗るのはいつものことだが、それでも奴が俺より上であることはあってはならない事実だ。
こんな事があっては、ただでさえ奴が調子に乗りやすい性格なのにそれに拍車を掛けてしまうのが火を見る以上に明白である。
危機迫る、緊迫した状況で俺は自分の名前を捜し終え、谷口の名前を捜そうとして……
「ん? 俺の名前の下?」
同じ順位、だと?
「キョン」
後ろから谷口の声が掛かる。
奴の片手が俺の肩に乗った。
「俺達は勉強しようがしまいが、結局同じなんだ」
谷口の言葉に、俺は振り向く。
「ウェルカム。谷口」
人込みの中で、同レベルのライバルが握手を交わした。
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