開戦

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開戦

開戦。 このたった二文字の言葉で人はまた悲劇を繰り返す事になる。 人が誕生してからというもの、血で血を洗う争いは絶える事がなく、それはまた宇宙世紀に入っても同じ事だった。 一度は人類が一丸となり地球環境問題の打破を誓ったのに、その結束力は半世紀程度しか保たなかった。 人が争うのは、もはや運命付けられたものなのだろうか?人は争いの中に、いったい何を見い出すのか… 開戦の演説がスピーカーから聞こえる。それをリオンはボォーっと聞いていた。 目の前には、無限に広がる宇宙。ジオン軍の船艦やMSが無数にある。それを眺めながら、戦争をするのが、どうしても他人事に思えてならなかった。 開戦の日が近付くにつれ、リオンは自分に人を殺せるのか…?と深く悩むようになっていた。 MSに乗れば、トリガーを引くだけで人の命を奪う事が出来る。それはスコアとなり、自分の評価が少なからず上がる。だが、本当にそれで良いのか…?見知らぬ人の命を簡単に奪い、それを喜ぶ。考えただけでもゾッとする。 一度だけ隊長に相談した事がある。 隊長はリオンの話しを真摯に聞いてくれた。リオンが話し終えると深い沈黙が訪れた。そして隊長の口が開いた。 「お前の言う事はもっともだと俺も思う。俺だって、まだ人を撃った事があるわけじゃない。だけど…、俺達は今ここにいる。ここにいるって事は敵になったものを討つ為だ。それに迷いを感じれば、多分自分が死ぬ事になる。だから迷ってはいけないんだ。俺はお前達の隊長だ。そしてお前達が好きだ。だから死なせたくない。だから俺は…きっと迷う事なく敵を討つよ。リオン。お前には重い十字架だと思う。だけど、開戦したら迷うなよ。敵は迷う事なくお前を討ちにくるからな。絶対に死ぬなよ…」ポツリポツリといった感じで、だけどその口調はリオンの心に確かに響いた。 そうだ、殺す為の戦いだから迷うんだ。これはきっと守る為の戦いだ。父や母。一人の男として認めてくれた姉や隊長の為に。そして彼らを死なせない為に。 あの時は迷いは晴れたと思っていた。だがしかし、こうやって開戦間近になると、やはり迷いが出てしまう。幸いに今日は出撃こそしているものの後方で部隊の周辺の警戒という簡単な任務だ。 だがリオンにもわかっていた。 もう迷っている時間はないと。
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