慟哭の街

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この街に法律はない。 俺は自分がどこで生まれたか知らない。どこから来たのかも。記憶の中にあるのはただこの街だけ、ようするに捨て子だ。だがこの街じゃあ珍しいことじゃない。たいていのやつは一人で力強く生きてきたやつばかり、この街はそんなやつらもうけいれてくれる。 帰る家があって、家族がいて、安心してベッドで寝れる奴らからみればこの街はスラムかもしれない、でも俺達にとってこの街はどんな奴でも拒まないマザーみたいな街なんだ。 「ようボブ、今朝の気分はどうだい。朝一の新聞、1セントだ。ありがとよ」 俺はこの街で新聞を売っている。朝ゴミ箱をあさり誰かが捨てたその日の新聞を手に入れるんだ。 今朝はなんだか街が殺気だっている。雰囲気で感じるんだ。この街に住むやつはみんな、肌で感じれる。 俺はメインストリートを避け、行き着けのクラブに入った。 「よぉダム、調子はどうだ?」 なじみの客に話しかける。ここにいる間は本当に時間を忘れる。肌の色がどうちゃらぬかす生臭い白人はいやしない、仲間だけのクラブだ。
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