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私はごく普通の農家の長女に生まれた。弟が一人いて、お父さんとお母さんがいて、お爺ちゃんとお婆ちゃんもいる。
私はまだ幼く小学五年生でいつも歩いて学校に通ってる。
そんな私には親友が一人いた。皆はその子の事をナギちゃんと呼んだ。そして私は皆からサエちゃんと呼ばれていた。
ナギちゃんは私とよく似ていた。似ているのは顔立ちの事ではなく、自分の周りを覆う空気みたいな物が似ているのだ。
私が好きな物は大体ナギちゃんも好きで、ナギちゃんの好きな物は大体私も好きだった。
特に秀でる事はなく、しかし劣ることもなくて、余り目立たなくて時折地味だよねと言われることも両者あった。
だからか周りは顔立ちが似ていなくても私とナギちゃんをよく間違えた。
星空が綺麗な夜のたんぼ道、私は涙ぐみながら歩いていた。
季節は梅雨時で、今日は雨続きの合間を縫って久しぶりの晴れだった。
草が風に揺れ、草と草が擦れる音が聞こえた。私の周りの音は、そんな草の音と小さな虫の音だけだ。
一度、流し切ったと思った涙がまた溢れ出してきた。
一瞬ためらったが、誰かに聞かれる心配がないと思い大声で泣いた。
「私のバカ!私のアホ!この卑怯者!この裏切り者!」
また私は自己嫌悪に陥った。そして今日の事を思い出す。
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