第八章 重なった三重奏

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それを聞いている要だけは、宗吾が嘘を言っていない事を理解している。しかし、事の経緯を沼津に話したところで信じるわけがない。 それに今は、一人の無実の証明よりも、多くの人々の為に突き止めねばならぬ事がある。要は二人の間に割って入ると、宗吾の顔色を窺いながら質問する。 「南雲さん、あなたは箕輪と室山をご存知ですよね?」 「えっ、み、箕輪、室山…い、いえ、知りませんよ、そんな男達なんて」 宗吾は、あたふたと室山同様の反応をしている。どうやら知っているのは間違いなさそうだ。 「おや?どうして男と?私は男とは言ってませんよ」 「えっ…あっ、い、いや、とにかく、そんな名前は知りませんよ!」 めざとく要に突っ込まれ、宗吾はあたふた取り乱し、ムキになりとぼけた。 だが、要はそれ以上、その件について追求はしなかった。即座に別の質問に切り変え、宗吾に突きつける。
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