第八章 重なった三重奏

11/16

639人が本棚に入れています
本棚に追加
/377ページ
「噂、ですか?」 要はハッとなり、村木に目をやった。 「まあ、一階の巡査が一気に署長にまで昇り詰めたんだ。周囲からのやっかみがあっても仕方はないだろうな。それに、火のない所に煙はたたんと言うしな」 「それで、どんな噂だったんですか?」 もったいつける村木に、要はじれったそうに催促した。 「箕輪の急な出世は、ある大物政治家に裏で手を回して貰ったとゆう噂だ」 「ちょっと待って下さいよ…大物政治家って、まさか!?」 要は瞬時に、南雲宗治が頭に浮かんだ。 「ああ、そのまさかだ。某政治家の献金疑惑の捜査にあたっていた二課の連中が、たまたま張り込み先の料亭で、箕輪と南雲が会食しているのを目撃したそうだ。それで、丁度、時期も合致するし、そうゆう噂が流れたようだな」 「じゃ、じゃあ、箕輪さんは南雲宗治を知っていた…」 「ふんっ…そうゆう事なんだろうな」 村木は鼻でなじり、なんとも歯切れの悪い言い方をした。
/377ページ

最初のコメントを投稿しよう!

639人が本棚に入れています
本棚に追加