5148人が本棚に入れています
本棚に追加
/340ページ
『琉依、悪いが出張用の荷物を届けて貰えないか?』
「また出張なの?」
つい不満の声が漏れる。
部長という役職についている父はしょっちゅう出張で家を空ける。
基本は一泊か二泊の出張だが、時々一週間の出張もあった。
『怒るなよ。』
情けない声を出す父に溜め息が零れた。
「今回は何泊?」
『…一泊。』
どこと無く様子の可笑しい父に、私の眉間に皺が寄る。
「お父さん、何か隠してない?」
『いやっ!何も隠してないぞ?』
慌てて否定する辺りますます怪しいが、追求するのは会った時にしようと決め、話を戻した。
「いつも通り駅に行けばいいの?」
『…いや、今日は職場の方に……』
歯切れの悪い父に、絶対何か隠し事をしていると確信した。
「私、お父さんの勤め先知らないわよ。」
『住所はメールしておくから、頼んだぞっ!』
慌てながらそう言うと父は一方的に電話を切った。
「…行きたくないんだけど…」
嫌な予感につい本音が零れた。
最初のコメントを投稿しよう!