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彼等のいる席が出入口に近かったこともあり、私は座っている礼央くんの背中をつまみあげて、外へ引きずりだした。
ツレの女には小声で
「他のお客様のご迷惑になりますので」
と正当なことわりを入れた。針のような視線を感じたが、鋼(はがね)のオーラで跳ね返したので痛くもかゆくもなかった。
「隼斗?会ったか?よかったー。鍵開けてやってくれー。今千鶴と会ってるんだよ。もうすぐ行くから中で待ってるように言って。うん。わかった。じゃあな、よろしく」
彼はパタンと携帯を閉じ、「ほらぁすぐだったろ?」
まったく悪びれもしない表情。
「ホワイトデーに彼女とおデート?楽しそうね~~」
とイヤミを言ってやると
またさきほどと同じ
「シーッ」のポーズをしながら足早に私の前を立ち去った。
こいつ確実に許せない……!!
なにがシーッだよ。
「あの人由実さんの知り合いなんですか?カッコイイのに、女の趣味が残念ですね」
まどかにも言われてたし。
私は、礼央くんの無言の依頼「シーッ」をもちろん完全無視し、翌日には詩織に全部話した。
茶色い、みたらし団子みたいな女と一緒にいたぞと。
そしてその翌日に、彼・森真二郎がペスカにやってきたのだ。
礼央くんに頼まれて、私の様子を伺いに……。
「由ー実さんっ。お待たせしましたぁ」
ハッ……。
まどかの声で一気に現実へ引き戻された。
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