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「嫌いなんだよ。聞くだけ聞いて、何も連絡してこない奴。だから、すぐだぞ、すぐ」
まぁ、わかる気もするなぁ……と思い、店を出て行った彼に私はすぐメールをした。
「電話番号は090××××××××」
ただそれだけ。
すると
「了解」
とだけ返事が来た。
「真二郎には、地元に長く付き合ってるかわいい彼女がいるよ」
少し前に、チビ(晃)からそう聞いていた私は、
なんだよ、女がいるなら却下だ却下。
そう思っていたはずなのだが。
……なのだが……。
「由実さーん、まだ7時ですよ。スプラッシュ行くには早過ぎませんか?」
「工藤さんに頼めば平気よ」
「すごいなぁ由実さんは」
スプラッシュ……そこもまた、あの人との思い出の場所。
……ホワイトデーの一件からしばらくして、結局別れることになった詩織と礼央くんの件で、
私は彼に呼び出された。
礼央くんを交えた三人で居酒屋で飲んだあと、
光のページェントを二人だけで歩き、
そして二人で飲もうと連れて来てくれたお店がここ「スプラッシュ」。
その帰り道で、私たちは初めてのキスをしたのだ……。
雑居ビルの地下1Fにあるそのバーへと、私とまどかは階段を降りて行った。
すると入口の掃除をしているマスター工藤さんに出くわす。
「く・ど・うさーん」
「お、由実ちゃん。久しぶりぃ」
長い髪を後ろで一つに束ね、黒のパンツに白い開襟シャツを着ている工藤さん。
清潔感のある大人の男のロングヘア。
近くに寄ると、いい匂い♪
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