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「え。うちの店来るにはちょっと早くない??」
「開けてぇ~~」
「しょーがねぇなぁ。本開店は9時ぐらいなのに」
「ぐらいって何よ」
「気分だよ気分」
「テキトーだなぁ。でも由実はそんな工藤さんが大好きなの。それまで貸し切りにしてぇ~~」
絡みつけた腕を軽くほどかれて、
「わかったわかった。ほら早く入れ入れ」
と、こともあろうに私たちは、ほうきで中に招き入れられた。
客をこの扱いって……工藤さんだから許すけど!
「おまえたち、おなかは?」
「空いてるぅ~」
「ったく、どっかで食ってから来いよ……」
「工藤さん……まがりなりにも私たちお客……」
「わかってるけど。うーん、ナシゴレンだな。俺の気分的に」
「作ってくれるのー?」
「他のものはダメな」
「ひどい店だねー」
私とまどかは、出されたビールで乾杯をした。
飲み物オーダーしてないのに、勝手に出て来たビール………。
工藤さんだから許す!
「まどか、さっきのぼくちゃんさぁ」
「え?本郷くんですか?」
「なんか、私の名前知ってるっぽかったんだけど、なんで??」
「ああ。オーナーが時々話すからですよ。
これは由実ちゃんが世界一おいしいって言ってくれたロールケーキ。
これは由実ちゃんが『センスいいですね』って言ってくれたカップ……。
まるで元カノ思い出すかのように」
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