最後のメール~私を忘れないで

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「あっ、お母さ……」 大沢先生の声が聞こえた。 「優也っ!!」 優美子は先生と入れ違いで入ってくるなり、 優也を抱きしめた。 信じられない光景に、目がまわりそうだった。 「あ。お母さんだ。うわっ」 母親の思いがけない行動に、優也も驚いている。 「優也いやよ、死なないで……!!」 「あ……苦し……お、お父さ……」 「おい、お前。ちょっと離れろ。死ぬななんて縁起でもない」 「だって、交通事故で重傷だって聞いたから……」 まったく……そそっかしい親子だなぁ。 「優美子ごめんね……そうじゃなくてね……」 「重傷に見えるか?優也はいつもと変わらず元気だよ。なにいきなり抱きしめてんだよ……」 「だって、死んでほしくないし……」 初めてだ。 初めて子供を抱きしめてくれた妻の姿を見て、 涙が流れた。 「お父さん泣いてる~」 「うるさい。見るな」 二人に背中を向けてふと気付くと、義母も静かに泣いていた。
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