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人影は僕に近寄ってこようとはしなかった。光が消えるのを待っているかのように、ただじっと立っているだけだ。
「誰なんだよ・・・」
ペーパーナイフを握って後ずさりする。
やがて光は部屋に溶け込むように消えた。光の消えた部屋の中央には、一人の人間が立っていた。
「やあ、はじめまして。脅かして悪かったな。」
彼はそう言って笑顔を見せた。
この状況が僕には理解できない。この人はいったいどうやってここに入ってきたんだ?
「やあっ、て、何だよ。」
「別に君を取って食おうって訳じゃないから、そんな物騒なものはしまってくれよ。」
ペーパーナイフを指差して彼が言った。僕はペーパーナイフを机の上に置いた。
「君は優秀な人間だ。僕はすっかり君のことが気に入っちゃってさ。僕のパートナーとして、僕と一緒に研究所に来てほしいんだ。単なる情報の集合体から、実体になれるんだぜ、悪い話じゃないだろ。」
彼の話は僕には理解できなかった。
「なんだよ、その、集合体だとか実体だとかって。」
彼はハッと気がついたような顔をした。
「ああ、ごめんごめん。君はこの世界のことを知らないんだっけ。」
この世界を知らないって、どういうことだ? 僕はこの世界の住人だ。
「どういうことだ?」
「これから話すよ。君にとってショックは大きいと思うけど、今から僕が話すことはすべて真実なんだ。」
そう言って彼は、『この世界』のことを話し出した。
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