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「この世界は、実在する世界ではないんだ。いきなりこんなことを言っても君は信じてくれないだろうな。僕だって自分の住んでいる世界が実在するものではないなんて言われたら、きっと信じられないよ。」
「この世界は、僕達の世界のコンピューターによって作り出されたものなんだ。でも、君達この世界の人間を一人一人僕達の世界の人間が作ったわけじゃない。僕達は、コンピューターで作り出した『シミュレーション・ワールド』に地球を作り、生物が出現しそうな条件を与えてやった。そしてやがて地球上に生物が生まれ、アメーバ、魚類、植物、恐竜等、進化を続けた。そして、君達人間が生まれた。」
「生物が人間にまで進化してから、僕達は君達人間の行動に興味をもってね。シミュレーションが終了してから、もう一度じっくり観察していたんだ。そして、自分の気に入った人間は、情報から実体化して自分の助手にしたりする。僕は君のいるこの大学に目を付けて、ここの大学院の研究所で君を見つけたんだ。研究熱心で、僕達の世界の人間のように思いやりの心がある。すぐに君のことが気に入ったよ。」
「おまけとして、君達と僕達人間の違いについて簡単に教えてあげるよ。君達は、動物から進化した。魚類は陸に上がり、爬虫類、鳥類、哺乳類に進化した。君達は、哺乳類から進化したんだよな。このことについては君達も知ってるだろ、学校でもそう勉強してるみたいだし。」
「僕達の世界の進化の仕方は君達とはちょっと違う。僕達の祖先は、植物なんだ。僕達の世界でも動物は進化したけど、進化のスピードは植物のほうが速かった。僕達の世界の人間の進化の仕方はこうだ。昔、ある植物の葉緑体がある種のウイルスにより少しずつ減少し始めた。葉緑体がなくなると、植物は光合成をすることができなくなり、死んでしまう。生きるためには、ほかの植物や動物から養分を摂らなければならない。そのために、植物は進化して動物になり、植物や動物を食べて養分を摂るようになった。それから人間にまで進化したって訳だ。」
「植物の葉緑体を減少させたウイルスがなければ、この世界はどうなったのか、シミュレーション・ワールドでシミュレーションしたんだ。でも、まさか僕達とそっくりになるなんてね。」
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