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~出逢い~
翼が欲しかった。
小さい頃から、ずっと…。
この空に触れられれば、こんな場所から消えていけるのに。
17歳になったばかりの佳苗は自分の住んでいる20階建てのマンションの屋上で溜め息をついた。
何度ここで同じことを願っただろうか。
佳苗の父親は飛行機のパイロットだった。
忙しくてなかなか逢えなかったが、
優しく頼れる父親が佳苗は自慢であったし、誇りだった。
それは母親も同じだろう。
そんな父親は、飛行機の事故で死んだ。
飛行機はめちゃくちゃになり、大惨事となった。
佳苗は父親に逢いたくてたまらなかった。
空を翔ぶ話を聞くのが大好きだった。
父親がいなくなって、5回目の誕生日。
欲しいのは一つだけ。
天国にいけるまでの、翼。
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