~幸せ~

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~幸せ~

「飛行機のパイロットで、大好きだったお父さん。 お父さんは飛行機事故で死んだの。私はお父さんから聞く空の話が大好きだった。 いつも空を翔ぶお父さんが羨ましくて、誇りだった…。 だから翼があればお父さんのとこまで翔んでいけると思ったの!」 少しぶっきらぼうに言う佳苗に、未風はうんうんと必死に相槌をうちながら聞いていた。 そんな未風を見るとなんだか面白くて、佳苗はまた、ププっと少し笑った。 「そっかー、で、死のうとしてたの?」 「死んだら翔べると思ったダケ」 「なるほどね」 うーん、と未風はしばらく悩むと、ぱっと顔をあげた。 「翼ってね、確かに空を翔べるし、便利だよ。 でも…翼持つと歩けないんだ。足は立つか、座るためにだけあるの。 私、みんなが羨ましいなあ。だって…」 無表情だけれど、少し照れたように顔を紅くしながら、 「足で歩くって、生きてる感じしないかな? 土を踏んで進むって、生きてる実感してそう…すごく羨ましい」 未風の言葉に、佳苗は少し考えた。 歩くって、確かに進むって感じ。浮いて進むのとは…少し実感が違う。 自分の足で進むって、かっこいいこと。 「それにね、そんなことして死んだってきっと翼は手に入らないよ」 「……どういう意味?」 少し、ムッとした様子で佳苗は未風を見つめた。
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