始まり

13/15
前へ
/68ページ
次へ
ヒュッ、ビュッ、ゴゥッ 四方から繰り出される打撃が、禍々しい風切り音と共に襲いかかってきた 一刀 「くっ………」 目を、眉間を、こめかみを、喉を───── あからさまに急所だけを狙ってくる 武器も持たず素手だと言うのに、一つ一つがまるで真剣のような鋭さをもっていた その一つ一つを避け、受け流し────体勢を立て直そうとする 男子学生 「……チッ、本気でしつこいなおまえ」 一刀 「うるせぇ!いつまでも調子にのんなよ、はっぁーっ!」 ヒュンッ! ドカッ 男子学生 「むっ……?」 一刀 「はぁぁぁぁぁ~~~っ!」 ブンッ、ビュンッ 男子学生 「くっ!?」 一刀 「逃げんな、コラッ!」 男子学生 「……チッ」 一刀 「ワケ分からんことばっかほざきやがって。とっ捕まえて警察に突き出してやる!」 男子学生 「……やれるものならやってみろ」 一刀 「やってやらぁ!らぁぁぁ~~っ!」 気合いを乗せた逆刃刀を渾身の力を込めて振り下ろす ヒュンッ! 男子学生 「ふんっ!」 ビュンッ! バシッ! 一刀 「ちょ、いくら逆刃刀だからって……拳で刀を受け止めるなんて、おまえ、正気かよっ!?」 男子学生 「ふんっ。それぐらい造作もないわ。……しかし、このままではラチがあかんな。おまえに付き合うのも飽きた。さっさと消えろ」 苛立たしげに言葉を放ち、少年は腰を落として拳を構えた 一刀 「………っ!」 その途端、少年の雰囲気がガラリと変わった まるで全身が抜き身の日本刀にでもなったような、息が詰まるほどの殺気が伝わってくる 一刀 「………」 俺も刀を鞘に納めて抜刀術の構えを執る 周囲の空気が、その温度を急激に下げたかのような錯覚に襲われる 背中を伝って流れ落ちる汗 その汗さえも冷たく、まるで氷のように俺の心を恐怖に濡らす
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

639人が本棚に入れています
本棚に追加