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一刀
「はぁぁぁ~~っ!!」
その隙を逃さず、俺は少年に向かって切り掛かった
少年は俺の刀を避けるときに銅鏡が少年の懐からこぼれおちる
男子学生
「チィ!鏡が……っ!」
一刀
「……っ!?させるかっ!」
スローモーションのように宙を舞う銅鏡に向かい、俺と少年は同時に手を伸ばす
だが────。
男子学生
「……っ!!」
一刀
「……っ!!」
伸ばした手も空しく宙を滑り落ちた銅鏡は、やがてその身を地面に叩きつけた
カシャンッ!
男子学生
「しまった……っ!」
硬質な破砕音を聞いて、少年の顔が焦りに歪む
男子学生
「どけっ!」
ビュンッ
一刀
「おっとっ!」
男子学生
「……くそっ。余計な手間を増やしやがって!」
一刀
「何が余計な手間だよっ!元々、てめぇが盗みなんて働かなけりゃ良かったんだ!」
言いながら、逆刃刀を構え直す
男子学生
「……何も分かってない奴が、ペラペラと喋ってんじゃねぇ!」
一刀
「おまえが泥棒だってことぐらい分かって───。な、なんだ……っ?割れた鏡が……!」
男子学生
「……チッ。もう始まりやがった」
憎々しげに吐き捨てる少年の姿が、、鏡から溢れ出した光の中に飲み込まれていく
光は徐々に広がりを見せ、俺の方まで伸びてくる
一刀
「なんだこれっ!?何がどうなってるんだよっ!?」
白くなっていく視界────
網膜を突き刺す白い光に対する未知なる恐怖が、俺に瞼を閉じさせる
一刀
「───────っ!?」
得体の知れない恐怖に、俺は声にならない悲鳴をあげた
光から逃れるために身体を動かそうとするも、手足はまるで石像になったようにピクリとも動かない
それでも俺は必死に光から逃げようとする
男子学生
「無駄だ……」
無様な俺を嘲笑うかのように、光の洪水の何処かから少年の声が聞こえてきた
一刀
「何がだよっ!?」
男子学生
「……もう戻れん。幕は開いた」
一刀
「だから何がだってんだ!?」
男子学生
「飲み込まれろ。それがおまえに降る罰だよ」
一刀
「どういう意味─────うわっ!?」
男子学生
「この世界の真実をその目で見るが良い───」
薄れていく意識の中─────
少年が呟いた意味ありげな言葉が、やけに耳に残り……俺の記憶はそこで途切れた────
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