桃園の誓い

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劉備の言葉やその表情と同じ、燃えさかる心の炎が、その掌を通して俺の心に染みいってくる 本気で。真心から誰かの力になりたいと考えている劉備の言葉は、逆らえないぐらいに迫力があり、魅力があった 一刀 「だけど……俺は君たちが考えている、天の御遣いなんて云うすごい人間じゃないよ?普通の、どこにでも居る学生だ。……そんな人間が人を助けるなんてこと、出来るのかな……?」 人を助ける。言葉だけで言えば、それはとても簡単に聞こえるけれど…… でも、それはとてもとても難しいことなんじゃないだろうか……? 関羽 「確かにあなたの言葉も正しい。しかし正直に言うと……あなたが天の御遣いで無くても、それはそれで良いのです」 張飛 「そうそう。天の御遣いかもしれないってのが大切なことなのだ」 一刀 「どういうこと?」 関羽 「我ら三人、憚りながらそれなりの力はある。しかし、我らに足りないものがある。……それは」 劉備 「名声、風評、知名度……そういった、人を惹き付けるに足る実績が無いの」 張飛 「山賊を倒したり賞金首を捕まえたりしても、それは一部の地域での評判しか得ることができないのだ」 関羽 「そう。本来ならば、その評判を積み重ねていかなければならない。……しかし大陸の状況は、すでにその時間を私たちにくれそうにもないのです」 劉備 「一つの村を救えても、その間に他の村の人たちが泣いている。……もう、私たちの力だけじゃ限界が来てるんです」 一刀 「だからこそ、天の御遣いという評判を利用し、大きく乱世に羽ばたく必要があるってワケか……」 確かに。もしこの世界が過去────いわゆる三國志の舞台であった後漢時代ならば、そういった神懸かり的な評判は、劉備たちにとって大きな力になるだろう 迷信や神様への畏怖ってものが、人の心に強く関係していた時代だ
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