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―――――――
弾むような足取りでデートに向かう及川を見送ったあと、俺は一人で家に向かっていた
一刀
「しっかし……あいつの妄想力もすげーな」
資料館に展示されている遺物を見るたび、この壺にはメンマが大量に入っていただの、この鎧は実は女の子が着ていて、それでHしてただの
良くそんな妄想が出来るな、とこっちが呆れるぐらいに喋りまくっていた
一刀
「愛すべきバカだな」
そういう人間が友人に居るってのは、素直に嬉しいと思える
一刀
「それにしても……」
気に掛かるのはあの少年のことだ
今まで学校内で見たこと無かった少年
だが彼がフランチェスカの制服をきていたのは、紛れもない事実
だからフランチェスカの学生では無いと、そう言い切れない
一刀
「だけど……やっぱり気になるんだよなぁ」
展示物を見ていたあの目
そしてあの身のこなし
何か武道をやっている人間ならば、立ち姿や身のこなしを見ただけで隙の無さが分かっただろうし、彼の強さというのが透けて見えるはずだ
その強さというのを感じれば、学校の中ですれ違っただけでも記憶の中には残るはず
だけどその記憶が俺には無い
一刀
「………」
釈然としない思いが頭の中で微かに警鐘を鳴らすなか、俺は暗くなり始めた道を家へと急いだ
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