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ポツリ不満を漏らしたことに気づき、僕は周りを自分なりに高速確認する。
すればやはり人は居らず、誰にも聞かれていないようだ。
一匹のポチちゃんが返事をしてくれたが、確実に理解できていないだろう。
タイトなカーゴパンツのポケットから、型遅れの夜に染まった携帯電話を出して開く。
急に現れたスターみたいな液晶に目が眩まされかけたが、負けたくない一心で戦う。
待ち受けでここぞとばかり自己主張している時計は、午後八時。
僕の愛しのサラブレッドを押しのけて何やっているのだと言いたいが、今回も勘弁してやろう。
見たかったからだ。
ところで夏がかなり近づいている今の季節、たまに吹く風がとても気持ちいい。
ちょっと全体的に長めにしている髪を乱されるのが気に入らないが、それぐらいは我慢出来る。
青臭い匂いが喉まで達したのか、咳が出てしまう。
つっかえたらしいそれは、様々な所を掠め、痛みを伴い体の外へ出ていった。
途端に体が重くなるのを感じた。
これはどういうことか、そういうことか。
両手は震え始め携帯電話を落とし、歩いているだけでは出ないであろう冷却水が全身に。
「さ、もう一踏ん張り」
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