始まり

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腕の中でスヤスヤと眠る輝羅を、俺の歩く震動で起こさないようにそっと歩く 俺の前を歩いてるこの寮管 多分彼氏がいる、しかもこの寮管がネコだろうな。俺の勘がそう言ってる。 「ソイツと仲良いのか?」 「ああ」 「俺は寮管の桐山竜美」 「転校してきた海翔だ」 「ッかいと?カイトってもしかして、コイツがよく話す海翔?」 「ああ」 よく話してたんだ、俺の事。 「転校して来たんだな、コイツの為に」 「ああ」 俺は輝羅の為に生きてるからな 「この部屋だ これは鍵、俺は寮管室に戻る なんかあったら聞きに来い」 「分かった」 部屋に入ると、真っ先に輝羅をベッドに寝かせた。 そう言えばベッドに居ると思ったアイツがいない。いつもベッドに置いてるから居ると思ったが 見渡す限り見つからない、輝羅の熊太郎。 「っ…」 輝羅から離れようとしたら、輝羅が俺のYシャツを握っていた。 「…かい、と…?…」 俺の温もりが消えたからなのか、眠りながらも無意識に俺の名を呼んだ。 「…んぅ…ど、こ?…」 「ここにいる、輝羅の傍に居るよ」 輝羅を抱きしめると、輝羅は『えへへ』と言いながら眠る。 「…輝羅」 愛おしい、俺の最愛。 誰にも変化を見せる事のない冷血で怖面の海翔が、愛おしそうに輝羅を見て微笑む姿を誰も知らない。 海翔自身も、こんな風に自分が愛おしそうに笑っているのは知らない。 ただ、輝羅が愛おしい。 _
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