それでもやっぱり 大鳥

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時々、自分の中が黒いものでいっぱいになる時がある。 例えばそう、―今とか。 もやのかかった真っ黒いそれは、俺の心の中を占領していく。 先生の話なんてとうに聞いていない。 黒板にチョークのぶつかる音だけが耳をすり抜けていく。 なんなんだよ、ちげーよ、どうなんだよ、わかんねーよ… 心の中でぶつけるあてのないどろどろした感情が溢れ出てくる。 斜め前に座っている男をちらと見る。 黒板とノートを交互に見てペンを走らせるその男の横顔。 ――あ、まただ。 黒いものが広がっていく。 いつ頃か気付いてしまったその感情に、受け入れたくない事実に、俺は最初瞬間的にそれを否定した。 ――男が男を好きになる。 そんなのおかしいだろ? なぁかすが。 不意に斜め前にいる春日が、こちらを向いた。 一瞬目が合う。 ふ、と微笑んだあと、ノートへと視線は戻っていった。 好き、という感情はどんどん増えていく。 その感情は黒いものへと変換されていく。 どんどん黒くなって、 俺はまた自分を否定する。 END あとがき→
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