いつもそばに 大鳥

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涙で滲んでまわりがあまり見えない。 ピンク色だけが視界をとらえ、向こうでごそごそと動くのだけがわかる。 楽屋の隅に置いてあった、弁当の入っていたビニール袋と倒れた椅子を持って春日はこちらへやってきた。 俺の後ろに椅子を置き、春日が座る。 胸にあてていた俺の手を後ろからにぎり、 「そのまま春日に体重かけて。」と言いゆっくり自分の方へと引き寄せた。 後ろからビニール袋があてがわれ、 吸って、はいて、の春日の声に従い呼吸する。 肩が大きく上下する。 俺の息で、袋が膨らんだりしぼんだりした。 袋は激しくカシャカシャと音を立てる。 ――しばらくそうしていただろうか。
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