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――暑い。
季節はもうすっかり夏で、家にじっとしているだけで汗が流れ落ちる。
去年クーラーが壊れたのを忘れていて、今室内の温度を下げる道具はうちわくらいしかない。
ただでさえ暑いというのに、決して広くない部屋に男2人がいるのだからよけい暑い。
「なぁうーじ?」
少しでも体温を下げようとしているのか、床に寝そべっている菅ちゃんが言う。
なーに菅ちゃん、俺が言うと、
「暑いなぁ」
そう言ってこて、とあおむけになった。
「そうやねぇ」
菅ちゃんの白いシャツから覗く首元が、汗でうっすらとにじんでいるのが見えた。
なぁうーじ?起き上がりもう一度菅ちゃんが聞く。
なんや菅ちゃん、俺も同じように答える。
「暑いけどなぁ…?」
赤ちゃん歩きでこちらまでやってきて、上目遣いで俺を見つめる。
…顔が近い。
「…暑いけど、もっと暑くなることがしたいねん」
にや、と笑って俺をゆっくりと押し倒していく。
床に背骨があたりゴツゴツする。
「…ええよ」
菅ちゃんが触れたところから熱が広がっていく。
一瞬だけ、ひゅうっと風が吹いた。
安っぽい音で、風鈴がからん、と鳴った。
END
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