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春日の手はあったかくて、すっかり冷えてしまった腕からじわじわと熱が染みわたっていくのを感じた。
春日はその冷たさに驚いて、次は手を握って温度を確かめ始めた。
「なっ」
その行動に今度は俺がびっくりする。
「…これは本当に風邪引くぞ若林。もうさっさと帰ろう」
冗談ぬきで本気で心配してくれているのがわかる。
―春日の優しさが身に染みる。
「…わかったよ、しょうがねえなぁ」
そう言って春日の傘の中へ入っていく。
…素直になれない俺を許して。
そしてどうか胸の高鳴りが春日に聞こえませんように。
心の中で呟いた願いは、降り続く雨の中へと溶けていった。
END
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