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…もう限界や。
いのもと、
そう言って井本を抱きしめた。
これなら泣き顔も見られんで済むし、一石二鳥や。
「…お前泣いてんのか?」
井本は離れて確認しようとしたが、ぎゅっと力を強めて離さなかった。
涙声になりながらも話しはじめる。
「俺な、井本と会えんくて、めっちゃさみしかってん。ずっと会いたくて会いたくてしょうがなかったんよ」
そう言うと、背中にあったかいものが触れた。
井本の手が俺に回されたんだとわかる。
「…俺もやで」
という声に、俺は驚いて井本の顔を見た。
「うわ顔ぐしゃぐしゃやな」
井本が顔を見て笑う。
「今俺もやでって言った?」
「…何回も言わせんなアホ」
そう言った井本は俺から視線を外す。
あれ?顔が赤いのはお酒のせいだけではないんちゃう?
「井本も俺に会いたかったんか?」
「それの何が悪いんじゃボケっ」
あー顔真っ赤や。
照れてる井本かわええ。
なんかめっちゃいとおしい。
この幸福な時間が消えないように、もう一回ぎゅーっと強く抱きしめた。
END
あとがき→
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