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「い…一万ゼルなんて大金、払えないから!」
「はぁ?これでも随分譲ってやったんだが。」
これを見ろ、と手渡された紙には内訳書である。
<蜂蜜檸檬の代金300ゼルに慰謝料9700ゼル。合計金額、10000ゼルをウィルバー・ウィンザードに請求します。ミレスト・セルファリオ>
(ミレスト・セルファリオ…って、聞いたことのある名前だなぁ)
思い出せないが、確か有名な人と同じ名前である。
まさか、ね。
「そうか、払えないのかい?十倍返しすると言ったのはソッチだろう。今更撤回するのかい?」
明らかに、彼女は不機嫌である。
状況は最悪であった。
じり、じりと近寄ってくるミレストに、ウィルバーは泣きそうになった。
(ハチミツレモンを溢しただけなのに…!)
今更後悔しても、遅かった。
寧ろ、彼女に話し掛けた事が運の尽きだったのだろう。
もう、彼女の腕はウィルバーの首にかけられていた。
「しょうがないねぇ…別なモンで払って貰おうかい?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
ミレストもの素晴らしい笑みで、ウィルバーの身体を猛スピードで揺さ振り始めた。勿論、首は締めたままであった。
ガクガクと身体を激しく揺らされ、酸欠に陥る彼には…綺麗な花畑が見え始める始末。
(臓器とられちゃうのかなぁぁぁぁぁぁぁ…)
手っ取り早く大金を作るには、それしか思い付かない。
薄れ行く意識の中、ミレストの恐ろしい笑みだけがくっきりと瞼に焼き付く。
そうして、囁かれた。
「種、ハチミツレモンがたわわになる樹の種で良い。」
「…え?」
意味が、わからない。
意識が朦朧としているのと、知らない樹の種子を請求されたからか。
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