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始まりは少女が世界を嫌った事。
汚い醜い、こんな世界。
「――イラナイ」
いっそ私が消えるか世界が消えるかしてしまえばいいのに。
少女は願った。
そして少女の願いは思わぬ形で、叶う事となる。
――キキィィッ、バンッ!!
鉄の塊であるトラックに撥ねられ鈍い音を立て頭から紅い血液を流すは地に伏しピクリとも動く事が出来なくなった少女、鞠亜。
「きゃああぁあ!!」
「おいっ!人が撥ねられたぞ!」
「救急車……!救急車を呼べ!」
「いやぁあっ!!」
「なんだ、なんだ?」
人が目の前で撥ねられ血を流している恐怖に悲鳴をあげる者。
本当に善人なのか偽善者なのかは解らぬが助けようと救急車を呼ぼうとする者。
興味津々の野次馬する者。
様々な喧騒が混じり合う中少女は朦朧としていく意識の中思った。
――ああ、私死ぬのかな。
同時に思うは願いが叶った喜び。
それなのに、
――ああ、どうして。
少女は泣いていた。
「――っ、あ……が……」
「喋らないで!今、救急車を呼んだから、もうすぐ来ますよ!」
別に何か言いたい訳ではなく只、漏れた呻き声のような言葉に手を握られ励まされる中、少女は泣きながら笑った。
死ぬことが怖いんじゃない。
この世界から消える事が嬉しかった、だから。
「さ、……ら」
――サヨナラ。
「おい、君っ!しっかりしろ!!おいっ!?」
手を握ったまま叫ぶ誰かの声。
それを、まるで子守唄のように聞きながら少女は口許に弧を描かせ、そして。
少女は自らが嫌った世界に最期の別れを告げた。
サヨナラ、私の嫌った世界
(まさか、こんな終焉だとは思ってもいなかったけれど)
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