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世界から消える事を望んだ少女、そんな少女は彼と出逢う。
彼との出逢いは偶然か必然か。
少女は運命の選択を迫られる。
カチ、カチ、カチ。
チッ、チッ、チッ。
秒針を刻む音を奏でるは最近、鞠亜が出掛けた時に目に止まり気に入って購入した二つの懐中時計。
一つは持ち主である鞠亜の左手にある暗めの金色をした王冠モチーフのデザイン。
もう一つは右手に持たれた、いぶし銀にも見える銀色をした蝶々をモチーフとしたデザインの懐中時計だ。
その懐中時計の時間を刻む音で、目を覚まし瞳を開いた鞠亜の瞳に映ったのは如何にも胡散臭そうな笑みを称えた齢二十ニ、三歳程度と思わしき青年だった。
「クスクス、初めまして」
「初め、まして……って……貴方……誰……?」
害は無いのかもしれないが念の為警戒するように斜に構えながら尋ねれば青年は、よくぞ聞いてくれましたとばかりにニヤリと笑い返事を返した。
「私ですか?私は君達人間に神と呼ばれている者ですよ」と。
そんな青年に鞠亜は呆気にとられたような顔で今現在聞いた彼の、呼称を口にする。
「……神、様?」
「そう、神様」
「ハッ、そんなもの居る訳ない」
「ははっ、これはこれは。随分と捻くれた、お嬢さんだ」
「捻くれてて悪かったわね」
「いえいえ、今時しっかり自らの意見を言える優れたお嬢さんだと御褒めしたいぐらいですよ」
からかっている感じたのかムスリと膨れる鞠亜とは対照的にクスクスと笑ったまま返答を返していく青年。
そんな青年に鞠亜の機嫌は徐々に悪い方へと悪化し苛立ちを露にしていく。
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