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「す…すんません……」
穴があったら入りたい気持ちに駆られながら、そう一言だけ言うと静かに席に座った。
クラスの女子の何人かは俺を見ながらクスクスと笑っていた。
恥ずかしいことこの上ない。
「いきなりでかい声出すなよなー。びっくりしたぞ」
ことの原因の後藤は、そう言いながらもケタケタと笑っていた。
呪ってもいいだろうか、いやいいだろう。
俺はまたもや溜め息を溢し、仕方なく後藤に目を向けた。
「…お前さ、綺麗な男がいたら、好きになる可能性はある?」
「……は?」
「だーかーら、男でも好きになれるか?」
後藤は一瞬困惑した顔をしたが、構わず俺は聞きなおした。
「そ、そりゃあ場合によると思うけど……。お前、まじでどうしたの。男にでも惚れた?」
「……そうだよな、場合によるよな」
「最後までちゃんと聞けよ!」
後藤のツッコミもスルーし、俺は本気で考え始める。
俺は、普通に女が好きだ。
でも、兄貴は別な気がする。
男とか関係なしに、いや、考えても意味を為さない。
一人の人間として、自然と惹かれていく。
けれど、その「惹かれる」ということに、どうしても引っ掛かるんだ。
おかしいんじゃないかって。
認めてしまっていいのかって。
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