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どこから見ても、確かに兄貴は男だ。
女から見たら格好良い容姿をしているし、女特有の可愛さもなければ女っぽくもない。
けれど、男から見れば兄貴は綺麗なんだ。
男の体つきをしてるにも関わらず少し華奢なところも、ドキドキしてしまう。
だから、勘違いではない。
ちゃんと兄貴を男と見ていて、それでも欲情する。
この感情が、後藤の言う「恋」というのだろうか。
俺は、兄貴に恋をしているのだろうか。
だとしたら──。
「あんまり難しく考える必要はないだろ」
「───え…?」
ふと発せられた後藤の言葉に、胸が跳ねた。
いつになく真面目な声で言うものだから。
俺の思考を見抜かれた気がしたから。
後藤に視線を向けてみると、奴の顔は真面目そのものになっていた。
慣れない奴の雰囲気に、思わずドキッとする。
驚いた。
こんな表情をするとは思わなかった。
じっと俺を見る奴の目は真っ直ぐで、見透かされそうだと思った。
「一度好きかもしれないと思ったらそれは好き。引っ掛かることがあったとしても、好きって気持ちに変わりはねえよ」
「……っ……!」
「お前が迷ってるのは、ただ素直に認められないだけで本当は気付いてるんだろう?」
そう言うと、後藤はいつもの奴に戻った。
砕けたような、そんな笑みを浮かべて。
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