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「お前、分かりやすいよ、本当」
少し呆れた顔で、それでも後藤は笑顔で。
しょうがないか、と俺に笑いかけてくれている様だった。
さっきまであんなに肩が重かったのに、後藤の言葉で軽くなった気がしたのは何でだろう。
きっと、心の何処かで求めていた言葉を貰えたからだ。
好きなものは、好きなんだってこと。
そうだ。
認めたくなさに自分で自然に気付かないようにしていたけれど、俺は──
「……後藤……」
俺は兄貴が、
永瀬一縷が、
「ありが、と……」
──ただ一人の人間として、好きなんだ──。
俺は、兄貴が好き。
曖昧で認めがたいその事実は、一端受け入れてしまうとどうも簡単に納得してしまって、不思議な気持ちだ。
何で後藤が俺の気持ちに気付いたのかは分からない。
けれど、そのおかげで胸がスッとした。
「俺、結構永瀬のこと分かっちゃったりするんだよねー」
「はあ?何だよ、分かっちゃったりって」
前触れもない後藤の一言に、ツッコミを入れてみる。
「いや、俺も何でか分からない」
そう言って、後藤はカラカラと笑った。
俺はそんな後藤を不思議な目で見る。
「変なの」
まあ、実の兄を好きになった自分が一番変なのだけれど。
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