自覚。

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まあ、いいや。 兄貴と会話が噛み合わないことなど極普通のことなので、気にしないことにした。 俺が気にしたのは、別のこと。 「そういや夕飯やら風呂やら言ってたけど、何で兄貴がやってんだ?今日母さん居ない日?」 俺がそう問い掛けると、こくんと頷いた。 「父さんも母さんも一週間家を空けるって、メールで来た」 「あ、そう」 あの両親もかなりいい加減だな。そんな連絡事項をメールで伝えるなんて。 少し呆れたが、よくあることなので頭の片隅に追いやった。 ちなみに、両親が家を空けることもよくあることだ。 そんな時、決まって兄貴が家事をする。 よって、今日も夕飯や風呂などを用意してくれたらしい。 兄貴も大変だな…。 ふと、そう思った。 両親が居ない日は、絶対に俺より早く帰って来て家事をしてくれる兄貴。 誰も兄貴に頼んだわけじゃないのに、いつの間にかそれが当たり前になっていた。 それはきっと、陸上部の俺を考慮してくれているからかもしれない。 兄貴はいつだって俺を優先してくれる。 ──自分の都合だってあるだろうに…。 そうは思うものの、兄貴の好意や優しさに、ついつい甘えてしまうのだ。 俺だって、何か兄貴に返してあげたいとは思うのだけれど…。
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