自覚。

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「で、どっちにする?」 「ん?…ああ。じゃあ、先に夕飯食べるわ。久しぶりに兄貴と一緒に食べれるし」 「………ん」 俺がそう言うと、一瞬、兄貴は少し顔を和らげ後、キッチンに戻っていった。 相変わらず返事の仕方はぶっきらぼうだったが、どこか嬉しそうな雰囲気だった。 そのことに気付いた瞬間、思わず息を呑んだ。 笑った。 兄貴が笑った。 他人から見たらそうは見えなくても、兄貴にとっては確かに笑ったのだ。 嬉しそうに。 これは長年兄貴を見てきた俺ではないと分からないだろう。 「……っ、何でそう嬉しそうなんだよ…」 普段笑ったりなんかしないのに。 鼓動が早い。物凄く。 ドキドキして、バクバクして、普段の俺じゃないみたい。 どうしたんだろう俺。かなりおかしい。 たかが兄貴の笑顔一つでこんなに動揺するなんて。 顔が熱くなるだなんて。 少し笑っただけの表情が、凄く綺麗に見えただなんて。 これじゃまるで。 まるで── 「──恋、したみたいだ…」 男に、しかも実の兄相手に恋をするだなんて有り得ないのに。 有り得ないと、そう思う筈なのに。 その後の夕飯の最中、俺は兄貴の顔を一度も見れなかった。
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