第一章 別れ

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愛する人に逢うため、 いつも朝早くから城を出て 馬を走らせたこの道も 今日で最後、 もう通ることは無いのだろう 自分の体に異変が起きたのは つい最近、一週間程前で 何も無いような所で躓いてこけそうになった その時は、 一緒に居た佐助に 旦那はホントどじだね~ と笑われて拗ねただけ でも次の日の朝、 目が覚めて起き上がろうとしたのに なかなか力が入らず 結局 佐助に支えてもらいながらやっとの事で起き上がれた 流石に佐助もこれはおかしいと思ったらしく、 心配かけたくない と反対する俺を押し切ってお館様に報告された 我が師はそれを聞くなり 直ぐに医者に診せろ と言って下さり 医者に診てもらった それが治せない、治らない病気だと次の日知らされる 不思議と、悲しみや恐怖もなどという感情は浮かばず 始めに頭の中に浮かんだのは最愛の人 政宗殿だった あと半年程の命だろう と 容赦の無い医師の言葉 段々と体の筋肉が動かなくなっていき 寝たきりになって 声も出にくくなって 最期は瞼程しか動かせなくなるらしい そうなると、死は間近という知らせ 話す事も出来ないので 最期の別れの言葉も 感謝の言葉も 言えない 自分はこんな残酷な病気に罹ってしまったのだ あと半年.... 今は夏だから きっと秋が来て 見る見るうちに寒くなり 雪が降り出す頃に 自分はこの世から いなくなる .
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