5/11

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
そして、十日目の夜。 彼女は自分のコトについて、話してくれた。 僕は一生懸命に耳を傾けて、たまに相槌をうちながら聞いた。 簡潔に語られる話によると、彼女はその奇異な髪と瞳の色から、村の人々に迫害されているというのだ。 確かに彼女は痩せ、ろくに食べ物を取っていないように見える。それに、よくよく見ると、所々痣のようなものがあった。 ――僕は生まれて初めて、腹が立った。 腹が立つ、という感覚はよく分からなかったけれど、嫌な気持ちになったから、きっとそうだろうと思ったのだ。 しかし、僕が怒ったところで、夜しか出て来れないのだから、彼女を助けてあげることはできない。 ――だから僕は、彼女に一つの提案をした。 僕の《闇》を少し分けて、君の髪と瞳を黒くしてしまおう、と。 綺麗な彼女の髪が変わってしまうのは惜しいが、それで彼女が平穏に暮らせるならば、と思ったのだ。 だが、彼女は首を横に振った。 朱い髪は母の形見で、自分の誇りだと。 だから、何があっても変えたりしない、とそう彼女は言った。 僕は食い下がったけれど、彼女は決して了承してはくれなかった。 僕は、諦めるしかなかった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加