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そして、十日目の夜。
彼女は自分のコトについて、話してくれた。
僕は一生懸命に耳を傾けて、たまに相槌をうちながら聞いた。
簡潔に語られる話によると、彼女はその奇異な髪と瞳の色から、村の人々に迫害されているというのだ。
確かに彼女は痩せ、ろくに食べ物を取っていないように見える。それに、よくよく見ると、所々痣のようなものがあった。
――僕は生まれて初めて、腹が立った。
腹が立つ、という感覚はよく分からなかったけれど、嫌な気持ちになったから、きっとそうだろうと思ったのだ。
しかし、僕が怒ったところで、夜しか出て来れないのだから、彼女を助けてあげることはできない。
――だから僕は、彼女に一つの提案をした。
僕の《闇》を少し分けて、君の髪と瞳を黒くしてしまおう、と。
綺麗な彼女の髪が変わってしまうのは惜しいが、それで彼女が平穏に暮らせるならば、と思ったのだ。
だが、彼女は首を横に振った。
朱い髪は母の形見で、自分の誇りだと。
だから、何があっても変えたりしない、とそう彼女は言った。
僕は食い下がったけれど、彼女は決して了承してはくれなかった。
僕は、諦めるしかなかった。
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