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ゆっくりと瞼を持ち上げると、彼女の瞳が、僕を映していた。
そう。
彼女の、――黒い瞳が。
僕は勢いよく跳ね起きた。
そこで、僕は彼女の膝に頭を乗せていたことに気付いた。けれど、今はそんなことよりも、と首を振る。
周りを見回してみると、辺りは、暗かった。
夜が、また廻ってきたのだろう。
だけど、僕の頭の中には、彼女の――暁の事しか、なかった。
「あ、かつき!? どうしたの、その……瞳、髪も」
「ああ。これ」
彼女は、なんでもないと言う風に、軽く髪を摘んでみせた。
「分からない。ずっとここでこうしていたら、いつの間にか、黒くなっていた」
「ずっとって……君はもう戻って……」
来ないものだと。
みなまで言う前に、彼女が口を開いた。
「……帰って、来たんだよ」
僕は、息を止めていた。
「あれから……村を出たまではよかったのだが……途中で、何処に行けばいいのか分からなくなってしまって……結局直ぐに帰って来た」
寝ぼけた僕の頭にも分かるように、ゆっくりと話す彼女。
だけど僕は、信じることが出来なかった。
それならば、それならば。
僕は一体何のために、あんなことをしたというのだろう……。
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