空が見た雲

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卒業式。私は泣けなかった。涙というものは私の中でなくなってしまったようだった。 翔(かける)も泣いていなかった。 「卒業式…一緒に出らんなくて、ごめんな」 それが、最期の言葉だった。ただの病気じゃなかったことは後から聞かされた。 入院してすぐに先立ってしまった。 煙になって、名前のとおり空へ高く高く昇っていってしまった。 なぜ、私が今ここにいるのかがわからない。 彼のいない空は私には青く見えない。 私には意味がない。 ここにいる、理由がない。
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